いろいろ

読んだ本の感想とか。男と男の膨大感情が好き。

「過敏症」「夏の子供」

 

 

 

夏の子供 魚住くんシリーズ (5) (角川文庫)

夏の子供 魚住くんシリーズ (5) (角川文庫)

 

 

ちょっと前にですがやっと4を手に入れて読破しました~!魚住くんシリーズ!

メッチャ良かった…!ほんとに良かった…!

また一気に読んでしまいました。

3巻の最後、2人はどうなるの~!?で終わってほんとにお預けくらってたのでまた貪るように読んだ。

 

 

「過敏症」はもう蜜月(?)ですね。

久留米を意識する魚住と、魚住を意識してしまう久留米が…今までさんざん近くにいたのに、改めてお互いを意識してしまう2人…!

シリーズの中で一番甘い巻でした。

そして作中のありとあらゆるものが「過敏症」でした。

この巻で魚住の事を好きになってしまう男が登場します。魚住はモテモテだなあ。天然人タラシだからなあ。

彼の存在は魚住と久留米、お互いがお互いにとってどんな存在なのか考えさせてくれるキーマンなんですけど…まあいわゆる当て馬、とも言うんですけど…

しかも彼は魚住の事を好きになってしまって、そして久留米は彼に魚住の事を相談してしまうという謎の三角関係が発展します。

しかし私は当て馬キャラを好きになってしまうので可哀想と思いながら応援してました…世の当て馬キャラ、みんながんばれ…

あと久留米がズルい男すぎる。

でも飄々としてる久留米、めちゃくちゃ「攻め」って感じでめちゃイイんですよね…何にも感情がなさそうな魚住がそんな久留米に踊らされてる感じも……たまらないです。私も踊らされてる。

人のそういう…身体の関係も進むので大興奮でした。何回も噛み締めてしまった…

ああいう過去がある魚住が、久留米を受け入れているのがマジで…刺さる……

 

他にマリちゃんメインの話も入っています。

マリちゃんが深く掘り下げられててめっちゃ良かった〜!

前にサリームとの短編で出てきてた馨という子が再登場します。

「マスカラの距離」っていうタイトルもめちゃくちゃ秀逸ですね…。

マリちゃんを見てると、この世のあらゆる事なんてどうって事無いな〜っていう気持ちになるから不思議です。

そんなマリちゃんにもまた明るいだけでは無い過去があったり。

明るさには明るい分だけ強い影が出来ますね。

初恋は実らない、とは言いますが、好きという気持ちの前では、愛とか恋とか好きとか過去とか性別とか関係無くて、好きというシンプルにそれだけなんだよなって思います。

 

あと魚住が…成長してて……

あんなに氷の張ったような人間だった魚住が他人の事で悩んで精いっぱい考えてて…

シリーズを重ねて魚住が成長してる姿が、ふとした時に染みてめちゃくちゃ感動です。

 

 

「夏の子供」はシリーズ最終巻になってしまうんですが…これも良い巻でした。

魚住の後見人をしてくれているおじいちゃんとおばあちゃんが、夏の間、施設の元気な男の子をお家で預かることになって、魚住もそこに居候する事に。

同時に彼は過去の出来事のPDSDに苦しみ出してしまいます。

PDSDに悩む人間!大好物!

さちのちゃんとの過去と向き合う時が来てしまったんです…

とある場面で男の子が魚住に言った「心の病気も治るんだって」という台詞が、何かとても痛かったですね…

似たような境遇のお互いと過ごした所で変わるものはもしかしたら無かったのかもしれません、あったのかもしれません。

二人だけが共有する感覚みたいな物があって、いつか振り返った時に宝物になるような時間は貴重ですね。

似たような境遇の持ち主の男の子と魚住がひと夏をかけて打ち解けていく様子、めちゃくちゃ美しい光景…

 

魚住の留学話も出たりして、色んなことが起きます。

久留米と魚住も、せっかく思いが通じたばかりなのに引き離されちゃうピンチ!であまり良くない雰囲気だったりしたのですが…

二人の出した結論も、そうだよ世界、これだよ、シンプルイズベスト!でした。

久留米に依存しないで立ち直ろうとする魚住、それに口を出さない久留米、でもそこにあるのはお互いを大事に今後も生きていくための愛。

愛だなあ…世界……愛だよ……

 

そして収録されていたハッピーバースデイⅡ、めちゃくちゃに泣きました。

大事な人の死って本当にいつまで経っても埋められないですよね。薄まってはいくんですが。

何年経ってもどこに居ても、魚住と久留米は魚住と久留米のままであ〜(天を仰ぐ)ってした。

 

 

このシリーズはいろんな人が登場して、みんな誰かしらに自分を重ねる事が出来ると思います。

だからこそ沁みるのかもしれません。

魚住は、いろんな過去と決別して、いろんな人と出会って影響してされて、強くなったというよりも逆に脆くなったかもしれません。

でもそれは生きる強さだ!魚住!

最終巻は生と死が強く書かれていて、毎日ただ生きていると忘れがちですが、今日死んでいく人がいて、今日生まれてくる人がいて、今日も生きてる人がいて、世界は淡々と動いてる。

死んでしまった人を悲しむ心の闇を埋めるものが無いように、生まれてくる子の歓びを表現する最高の光を表現できるものもなくて。

人は人と関わってでしか生きていけないから、でも完全に他人を理解することは出来ないから、だからこそお互いを1人の人間として尊重して、わかり合おうとしたり理解しようとしたりしながら、この本に出てくる人たちのように、生きていけたらいいなと思います。

そうやって世界は回ってる!

 

 

また最高の、男と男、1人と1人の関係に出会ってしまいました。

ありがとう、魚住真澄。

君と世界を見る事ができて、良かったです。