いろいろ

読んだ本の感想とか。男と男の膨大感情が好き。

「夏の塩」「プラスチックとふたつのキス」「メッセージ」

軽くネタバレしてます。
 
宮廷神官物語を読んでる関係で榎田ユウリ先生ブームが急に来て、読みたいな〜と思ってた魚住くんシリーズ。有名なやつ。
榎田先生は別名義でガチの方のBLも書いてますね。
少し刊行年数が古いので、書店にナウであるかな…と不安だったんですが、行った書店の古本コーナーに〜3まで置いてあってすぐ買いました。
全部読んでからまとめて感想書こうかと思ったんですが間があきそうなので。
 
 
元々はBLレーベルから出てたシリーズ。
角川の普通のレーベルで刊行し直してるので、ふんわりなのかな…と思ってたんですけど、読んだら結構がっつり男と男の関係!でした。
男と男、1人と1人の関係の物語が大好き。
夏の塩を読んで、あ〜〜もうコレは好き〜と思いながら3冊ノンストップで読んでしまいました…。
 
魚住のちょっとイっちゃってて誰よりも孤独で、壮絶な過去があって、麗しい容姿を持ってて、そのアンバランスさのバランスが絶妙です。
彼は私達が考える500倍くらい物凄い過去を背負ってるんですけど、それが悲しいという事なのか、寂しいという事なのか、幸せとは何なのかわからず、でもそれが彼の中の普通で生きてるんですよね。
自分の過去を嘆いたり、それを理由に腐ったりしないんですけど、だからこそ何も感じてなくて自分の心の上に氷が張ってあって、その上を滑って生きているというか。
その氷を、ちょっとずつ割っていくみたいなシリーズです。
溶かすだと優しすぎる、溶かして割る!って感じです。
 
その魚住が唯一心の底の無意識のところで頼ってる存在…が久留米なんですけど、めちゃくちゃガサツで酒も好きでタバコも吸ってて、でも実は優しいフツーのサラリーマン。
この久留米が、久留米だからこそ、久留米じゃないと、魚住に引きずられず且つむしろ包むくらいの精神で魚住と付き合っていけないんだろうな…と感じさせる、魚住にとって唯一の人間なんですよね…
ですよねっていうか私が感じただけなんですけど…
ふたりとも、世間一般の性善説を基にして判断すると「普通」の枠ではない、って感じの人間なんですが(魚住は普通じゃないけど)、でもその2人のバランスが絶妙〜です。
自分の気持ちが、他人の気持ちがよくわからない魚住が、久留米に対する気持ちがLOVEの方の好きだと気付いてしまうのは本当に美しい。
 
 
2人の関係はただの大学の同級生、ってとこから始まるんですけど、少しずつ変化していくたび、ウオ〜〜!と思わず悶えました。
お互い、相手に対しての感情にちょっとずつ気付いていくんですけど…魚住の方がちょっとませてたのがまた良くて…
久留米も心の底では気付いてるんですけど…自覚して決意するまでと、もう本能には逆らえない感じが繊細で本当にときめきました。春…。
夏の塩(1巻)で、魚住の味覚障害が治った瞬間がもうマジでサイコーで、夏の塩っていうタイトルは天才です。
すごい…エロい……(語彙力〜!)
 
 
恋愛面はキュンキュン路線なんですけど、本筋の方は中々テーマが重くて、そのギャップもまた読み応えあって良いです。
魚住の味覚障害とEDから始まり、過去のいろいろと向き合ったり、自分の弱さと向き合ったり、そしてその1つひとつからでてくる魚住のエピソードが本当に重い。
魚住の過去…では無いんですけど、そしてシリーズを読んできた方は全員衝撃だったと思うんですけど、メッセージ(3巻)は衝撃且つ重すぎて…ちょっと泣きました。
久留米があの…あれを…握りしめるシーンとかこの世の全員泣いたと思います…。
しかし、最後はもう…ワア〜〜!!となります。
メッセージは、魚住も久留米も2人の関係もすごく変化する巻でとっても良かった。感情が忙しい。
人が精神的にも肉体的にもボロボロになって弱ってる姿が描写されてるの、本当に好き。
でも魚住には心配して、手を差し伸べてくれる人達がいて幸せだなと思います。
その幸せに気づいてくれるといいな。
 
 
 
このシリーズは2人の関係もそうなんですが、出てくる人間全員がとっても魅力的です。脇役…とはとても言えない強烈な方々。
メインは男と男の関係なんですけど、性別の垣根を超えたヒューマンドラマな面も大きいですね。
そこがBLという括りを跨げる理由かなと思います。
しかも、最初は全員何だコイツ…みたいな人たちなのに気づいたら全員好きになっててすごい。
BLにおいて、出てくる女の子に嫌悪感を抱くか抱かないかはめちゃくちゃ重要なんですけど、このシリーズの女の子はみんな好きなのでハッピーです。
人間って、みんな表には出さないけど色々なものを背負って生きてるんですよね。
他人から見たら羨ましいと思う事も、蓋を開けてみたら自分には手に負えないくらい悲しいことが絡んでたり。
本人は笑ってるけどその裏でとても苦しい思いや経験をしてたり。
価値観や考え方が違う中で関係を繋いで、保っていける人達は貴重だなぁと思いますし、繋がりを保ってくれる人達には感謝して生きねばなと思います。
自分だけがツラいというのは、正解でもあり不正解でもあり。
自分の価値観は自分にしか通じない基準 なわけで、他人の価値観をいかに受け入れ…というか、尊重して付き合えるかは、生きていく上で重要なことだと思います。 
このシリーズの人達は、みんな色々を抱えて経験してるからこそ、それが出来てるような気がして読んでて心地良いなあと思います。
魚住が優しい友人たちに囲まれて、ちょっとずつ前に進んでいく話。
恋という感情から、他人の想いと、自分の想いと向きあう話。
悲しくて寂しくてでも暖かくて優しくて、こたつで食べるアイス、みたいなシリーズです。
 
 
早く次の巻を手に入れないと干からびて死んでしまう…。
超どうでもいいですが某バレー漫画の敵チームの金髪とクロ、の容姿イメージで読んでました。勝手に。
挿絵がないやつは自分の好きなビジュアルで楽しめて良いですよね。
次巻に続く。